【本】「昭和45年11月25日 三島由紀夫自決、日本が受けた衝撃」中川右介(幻冬舎新書)
「昭和45年11月25日」
この日に起こったことが何なのか、知らない人はいないだろう。というか、少なくとも私と親しくしている人で知らない人はいないと思う。もっと言えば「知らない〜」という人とは親しくなれない気がする(笑)
それくらい大きな事件だったはず。
私はまだ生まれていない時の事件だけれど、もちろん知っている。演説もTVで見たことがある。檄文はもちろん読んだことがある。「楯の会」(会の中身が昔と同じなのかどうかは不明)の集会のポスターも見たことがある。
この本は昭和45年11月25日に何が起こったかを、当時の人たちの回想や寄稿文などを集めたもので、三島の行動ではなく、そのことを知った人たちがどうしたのかを集めてある。
とてもおもしろい本だった。久しぶりに本を読むのに熱中してしまい、電車を乗り過ごした。
この事件は今だったら映像も流れないし、まして三島と森田の首の写真など新聞に載せるはずもない。1970年だったからだ。(岡田有希子の飛び降り自殺の遺体の写真は見たな。1986年だって)
当時は携帯もない、FAXもない。カメラもフィルムだしデカイし重いし。
でも1970年11月25日のことは何らかの方法でみんなその日に知った。
私の母は当時高校生で、ちょうど事件はお昼時だったので校内放送が流れたそうだ。
「三島由紀夫が市ヶ谷の自衛隊に立てこもって、割腹自殺した!」
情報が得られるのはきっとTVがある職員室くらいだから、先生が流したのだと思う。
そういう女子校だ。私もその高校の卒業生だからよくわかる。三島を読んでた人もたくさんいたと思う。
この本はオススメしたい。
とりあえず、私の親友が三島ファンなので、貸す予定になっている。
ただ、ひとつ納得行かないのは「あとがき」。
三島は戯曲もたくさん書いていた(評価も高い)し、役者もやっていた(こちらは評価は低い)から、演劇に触れることは当然なので、歌舞伎のことに触れるのも当然なのだが(三島の歌舞伎作品は今もよく演じられる)、その中の一文に「海老蔵の時代が来る」とあり、ここだけは全く同意できない。この著者はかなり歌舞伎も見ていそうだし、これだけの資料をバッと集められたくらいなので(手持ちの著書・資料だけで100人分くらいの三島について書かれているものを集められたらしい)、知識も見聞も広そうだし確かそうなのに、「海老蔵の時代が来る」だと?
初版は2010年なので、海老蔵と言ったら今の海老蔵だ。
私は海老蔵の時代は来ないと思う。
少なくとも、歌右衛門や玉三郎と並ぶようなことはあり得ない。私が親しくしている人で海老蔵を評価している人は一人もいない。冒頭と同じになるが、海老蔵を評価する人とは多分親しくなれない。海老蔵で評価できるのは「見た目」だけである。写真集ならいいかもしれない。でも動いたらもうだめ。下手くそ!と、大向うをかけたくなる。無駄に目をギョロつかせるし。
アレで團十郎襲名はホントに困ったもので、だいたい古典ができないから、当初一昨年襲名予定のときの演目見たら2ヶ月歌舞伎座でやるのに同じ演目。結局演れるものが少ないということでしょう。なのに市川宗家。頭が痛い。
そこだけはこの著者に同意できないけれど、この本は「買い」である。ちゃんと紙で持っていたい。そして時々見返したい。
*追記(2022/4/18)こちらの著者は歌舞伎に関していくつか著書がありますが酷評されているとのこと。みんなの総意として「何もわかってない」「どれだけ見たのかわかったもんじゃない」などなど。でもいくつか本がでているということは、何もわかってない出版社・編集者が多いという事でしょうか。
まぁ、この本は歌舞伎関係ではないので、よしとすべきか。

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